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10月2日の出来事

10月2日の出来事、秋の日差しが少しばかり強い平日の朝、気分転換に二人で海岸通りを散歩した。

 

主人公はあの人、昨日から泣きはらした目と、失望感一杯の浮かぬ表情が痛々しくて、僕が誘った。

 

あの人は後悔の中にいた。

自分が選び進んだ道が、思いもよらぬ程に、合わずに引き返す決意をした直後だった。

「いい大人が、たった1日で・・・」自分に向けられた言葉だった。相当に不本意なようで自分自身を攻めてもいたが、経緯を見てきた僕にはよく理解できた。

 

 

「藤沢市給食配膳員を募集します。」 道すがらの、市営保育園の門前に張り出された求人広告に目を止めて、「ぶつくさ…」そんな姿を見かけてから 三回目、「応募してみようかな~」とあの人は言った。

市立保育園の配膳係というのは、藤沢市の臨時職員という事になり、いわゆる「しっかりした職場」とも言われているようで、どうやら その辺りも大きな理由の一つのようだった。

海岸通り、マック横のおもろい建物、これってなに?


これまでのホテルキーパー(清掃管理者)の仕事は

ハードワークな割に… 清掃担当のおばあちゃん達など「最低自給」にあてはまらない出来高制の契約下で、「ブラック」さながらの労働条件だという。

皆で 励まし助け合いながら、何とか成り立っているような職場で、僕は、あの人の「愚痴とやりがい」の入り混じる仕事話を酒の肴にする事も度々、状況は、よく理解していた。「仲間達を愛してはいるけれど…」

そんな思いで長年働いてきた あの人が転職を考えたのには、様々な理由が考えられた。

僕の事も大きな理由だろう、そしてそれを可能にしたのは、やはり「矢風さん」の存在だろうか?    最近、あの人の「仕事話し」の収まりが良かったのは彼女の活躍が大きくて、ようやく信頼できる同僚に、出会い「引き継ぐ」事を考えられるようになったようだった。

 

そんな思いで求めた「キチっと」職場だったのだ。

転職の不安はおそらくもっと別の所にあったはずだ。


「面接は市役所だって~」「どうせ受かるはず無いしね~」

最初はこんな調子だったが、応募しても書類ではじかれているような僕と比較すれば、トントン拍子に事が運んで ついには、あっさりと採用までこぎ着けた。 「うん?」僕が最初に違和感を感じたのは、この時だろうか、面接というのは企業側のテストでは無い、近年の 社会常識で言えば、労働者に職場を理解させる責務は企業側にあり、まず、第一レベルは採用担当にあるはずである。ところが、面接官は役所の保育給食担当職員で外部サポート的役割の人間が務めて、職場を見せる事なく採用を決める。雇われる側にしてみれば、お役所側に「品定め」をされただけで、自分は職場を目にする事も無く、仕事が決まるのだ。 僕の社会常識では「考えられへん」である。

仕事の説明は、その後の園長先生と現場リーダーとのミーティングだという、仕事は10月1日かららしいが、採用決定後で仕事開始前に、ミーティングや検便を届けたり書類提出がある。すべてはお役所や園の都合であるが、当人達は決められたルールを守る事しか考えていないから疑問にも思わない。  「民間ではありえへん」

結局、現場ミーテイングの後も、いつ働いていつ休みかさえ決まらずに、上から徹底指導されている「衛生面」の細かな「マニュアル」をはじから読み上げるように伝えられたそうである。 

これを聞いた時の僕の感想は、正に「お役所仕事」である。「作業をこなす事」を仕事と考えるから「質」も然りだが、作業書には、恥ずかしげも無く「効率・適正を判断する」「考える」などの文字が並ぶのだ。

仮にお役所が本質に目を向けて、手前都合に縛られた「ルール(マニュアル)」を乗り越えて謙虚になれたならば日本の無駄は大きく減る事だろう、無駄の根源は「行政府」といっても過言ではない。

ただ、僕はあの人には意見しなかった。交通費の算出の為に必要だという地図作りにも最大限協力した。

海岸線の「モス カフェ」でモーニング!

これで3回目、ずいぶん久しぶり 解放感があって 中々良いんだね、ここ!

ところでイートインだから消費税8%だよね?…


そして10月1日を迎えた。

この日は、消費税が10%に上がった日でもある。 日本の行政府の思いあがった政策の無駄さをある意味形づける日となった。

 

あの人は、準備した新しい弁当箱に「白米」を詰めて水筒と着替え、準備万端で出かけた。

「良い職場でありますように!」

願って、送り出した。

 

確か、募集案内には16時までと記載されていたが

終わりの連絡は17時過ぎていた。

電話口 声が震えるのがわかった。

案の定、トボトボ、目をはらして帰ってきた。

 

「無理だと思う… どうしよう~…」

ハンドタオルが涙溢れる目元を押える。

何というか、悔しさがにじみ出ていた。


「どうした~?」 耳を傾けようと思った ただ、聞いて… 気のすむまで… その内容は、ある意味では違和感を裏付ける、手前勝手で、傲慢な組織体質だった。この異様な理屈を共有できる者達だけが「親方日の丸」のうま味を許されるというのか?…

先日、市役所の健康保険課を訪れた時の話しだ。

役所は、忙しさを醸し出す人々の往来が激しく、この身体では気後れするので苦手だが、やむを得ない。

 

今時のお役所システムでは、目的別に整理券が発行される。 何故なのか?自動機械の前には職員が立ってサポートしている「これって必要?仕事?公務員?」見回してみるとかなりの人数がそういった業務に従事しているのだが…  一部の相談窓口は大渋滞で、後はガラ~ン よく見る光景だが「マネージャーはおるんかい~」と叫びたくなる 役所が言い訳として持ち出す「公正・公平」だが、職員は意味の違いさえ理解していないで、脇目も触れず、ルールを遵守を念仏のように唱え机に向かう。

 

「健康保険についての相談」の項目をCLICKして順番を待つ、広いカウンターの右隅の「相談ブース」では、若い夫婦であろうか?カップルが相談中で 他に客は無くガラ~ンとしている。

 

僕の目的は、7月に年度更新された健康保険料金が、昨年度助成を受けた状態より値上がりされていたので、状態に改善が無い事情を説明し、助成を延長できないものか相談に来たのだ。これまで35年以上健康保険をキチンと納めてきた当然の権利と思いながらも、救済を求めるのだから、少し申し訳ない惨めな気持ちになるのだ。

しばらくすると番号が呼ばれた。右ブースに目をやると、まだ使用中だ。カウンターの左隅、女性が立っている。僕は立ち上がり向かう、どうやら立ち話の相談のようだ… 「参ったな~」と思いながら受付職員を通り過ぎて、左隅へ 女性はその様を眺めている。

ようやく女性の前に、杖をカウンターに立てかけて、番号札を右手で渡すし、軽く会釈をした。カウンターの上にリュック降ろして持参した書類を取り出そうとするが、この程度の作業でも上手く出来ず、苦笑いでまた会釈、書類を渡してようやく趣旨を説明しだしたが、それまで死んだ目で無言を貫いていた女性職員は「保険料が値上がり」のフレーズに即座に反応して「調べます」と言い残し、書類を持って 裏へ消えていった。話し半分の僕はカウンターに寄りかかり待つ女性職員の姿が見えて、こちらに向かいながら説明を始めたのがわかった。僕の前に着いた時には説明は終わっていた。「こちらはルール通り、間違えは無い」と言いたい事だけはしっかりと伝わってきた。

「あとは何か?」彼女が言う。

僕という人間は物腰は柔らかい方であるが、35年間サービス業に従事してきただけに哲学もある。 それだけに世間に散らばる「サービス精神」について、いちいち感動し憤慨する。憤慨は「二度と利用しない」を意味した。半日は確実に機嫌がとことん悪くなるので、あの人は危険を感じるスポットへは絶対に近づかなくなった。

「問題があれば相談窓口もございます」彼女は続け、

右隅のブースを指しているのはわかっていた。

 

「もういいです」声を荒げてしまった。

「問題があれば…」彼女の繰り返しを遮り「相談にきたんです」「もういいです」やや大きな声で荒げた。

ここからが、カッコ悪い… モタモタ書類をファイルにはさみ、リュックにしまい背負う、杖を手に取り  ピョコタン…ピョコタン周囲の視線を一身に感じながらフェイドアウトしていく。

はらわたは煮えくりかえっていた 終始、キチンとした言葉遣いの裏側は、誠意の欠片も無い職務態度である。

完全に職務や立場について、何か勘違いをしている。僕は相談窓口を尋ねたが邪険にされる覚えは無い。

それでも務まる「市役所の保険課相談係」という仕事が理解出来ない 「二度と利用しない」わけにもいかない

クレームを入れた所で、本質的な解釈に基づいた反省は望めない 「お役所仕事とは」そんなものだ。

あの人の話しだが、まだ興奮して言葉が出ない、と、涙が溢れる。 交通費の承認が降りないので書き直してこいと言われたそうで、役所側の指示で通勤ルートを指定されたと言う。 聞いたことも無いバス停だという。 調べてみると確かに存在するバス停であったが、そのルートは、現実には非常に効率の悪いのだ。料金的に確かに20円位安いが、海岸線を通る為に、考えられない位渋滞し、通勤・通学に使う事など有り得ないのだが役所の担当はその路線で手続きを進めているそうだ。提出用紙には「最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤経路を申請せよ」と書かれていた。正に「お役所仕事」の低次元と傲慢さが出ている多少不便だが同料金で別ルートを提案したが歩行距離が長すぎるとの意味不明のダメ出しをされたそうだ。

「ふ~ん」とりあえずこの程度の反応にしておいた。 次は、現場教育に話が移った。

 

保育事業の無償化が行政により推し進められている。少子化対策の一環として官僚が考えた政策でまるで既定路線のように扱われ既得権益が垂れ流されている。 保育環境はここ数年で大きく様変わりする事は間違いないのだが「いったい何処へ向かうのか?…」 そんな中、保母さん含め、全てのスタッフの人材不足が深刻なそうだ。

そんな中、あの人は就職した。 案の定の人材不足で「忙しいから指導する暇が無い」「マニュアルを見て学べ」と、とんでもない事を人材育成の現場担当者が言ってのけたそうである。

その癖、上からお達しの「衛生管理」に考えも無く縛られ、教えようも無いほどの複雑なルールを設けている。

その閉鎖的な環境は、独善的かつ封建的で、6年もの経験者が主任の前では飼い猫の様だという。

 

あの人は、清掃指導を任され多くのスタッフや業者との協業をしてきているから「給食当番の仕置き」が、程度の低い遊びに映ったのだろう「教え方下手すぎ」その言葉に頼もしいプライドが見え隠れした。

 

この辺で僕は意見した「働く価値 無くなく無い?」

明日30分早く出勤して園長に「合わないので、退職します」と言えばいい と伝えた。

人を雇う準備が出来ていないのは明らかで、本来なら責任問題であるが、それでもまかり通り、おそらくは他人のせいにして、自己は一切の反省も無いのが腹立たしが「お役所仕事とは」そんなもんだ。

その後、NETFLIXで「明石家さんま」の脚本制作によるドラマ『Jimmy(ジミー)』【9話完結】を見つけて二人、大爆笑でいつの間にか寝た。

 

朝、目が覚め 準備するあの人の背中に僕は言った

「終わったら、海岸線を散歩しようよ…」

 

「うん💛」